実技の指導をしているとき、指導者や保護者から「動画を撮ってもいいですか」と聞かれます。団体からセミナーを頼まれた場合は、団体の規則でダメなのですが、そうでない場合は、撮影OKにしています。
この「動画を撮ってもいいですか」について考えてみます。
友人の指導風景
動画を撮るということは
スマホを常に持つようになり、いつでも写真と動画が撮れるようになりました。私も動画はあまり撮りませんが、記録用に写真を撮ることが増えました。手軽に映像に残せるのはとても便利です。
先日、あるスタジオで今後指導をはじめるかもしれないチームのコーチに実技のデモンストレーションをしてきました。
小学生、中学生のチームを発足するにあたり、どういった指導をするのか一度、体験させて欲しい、ということでコーチのもとまで行ってきました。
普段は無料体験やサービスでの指導(「ごはんおごるし、一度見てくれ」という先輩からのお願いも含めて)はしません。今回は以前よりコーチを知っていましたし、チームを立ち上げる上でのコンセプトも聞いていたのでやることにしたのです。
彼が現役時代、所属しているチームを指導したことがあること、今後、月に一回指導することがほぼ決定していたことも理由です。
そしてしばらく、フロアでの動きのトレーニング指導をしていなかったので、自分の事前練習も兼ねて承諾したのです。
現場に行くとコーチと一人の男性がいました。男性はチームと関係はないのですが、彼の仕事の部下であること、仕事でスタジオにいたということで、参加したいということでした。そしてもう一つの役目は動画を撮ることでした。
「動画を撮ってもいいですか?」と。
コーチを指導する様子を動画に撮り、私が指導をはじめるまえに予習をしていたいからだそうです。
もちろんOKをしました。
コーチとはある程度話し合いをしていましたし、知り合いでもあるので了承しました。そしてちゃんと断りをいれてくれたからです。
ときどき1回限りの指導に行くと、保護者や、コーチが何も言わずに動画を撮り始めることがあります。子どもの様子を撮るならばいいのですが、指導の様子を撮られると正直これはどうかと思ってしまいます。一言断ってくれればいいのにとも。
・お金を払っているのだから撮って当たり前
・録画しておいて後で、復習してお金の元をとる
というものから
・今後も正しい指導をしたいから
・備忘録のように撮っておく
などいろいろな思いがあってのことでしょう。
私の場合は断ってくれればOKにしています。断りなく撮っても文句は言いませんが。
動画を撮られるということは
動画を撮られるということは、あまり好きではありません。めったにはないでしょうが、変に伝わったりしても嫌だし、知らないところに映像があるのは不安だからです。
その不安はなんなのかをまとめてみます。
そもそも自分の映像を見るのが照れくさい
子どものころ自分の録音した声を聞いたときはびっくりしました。
当時は今のように、映像と音声がセットの時代ではありませんから
カセットテープに録音をするのです。
はじめて録音された自分の声を聞いたときは衝撃を受けました。
「自分の声じゃない!」と親に訴えかけたのを覚えています。
みなさんはどうかわかりませんが、今でも自分の声や映像を聞いたり見たりするのは得意ではありません。
もちろんまぎれもない現実なのはわかっていますが、ちょっと照れくさい気がします。
知らない人のところに映像がある恐怖
芸能人でも、アイドルでもない、ただの地方のトレーニングコーチですが、私の知らない人の元に映像があるとういうは少し嫌な気がします。
先に上げたコーチや、定期的に指導しているチームのコーチならばいいのですが、知らない人が動画を持っているのはちょっと。
おっさん同士が映像を見ながら、ぼろくそにいっていると思うとへこみます。これは冗談ですが、可能性はないとはいえません。
批判の対象になっているかもしれませんし。
ノウハウを盗まれるのではないか
今は全く思っていませんが以前は強く思っていた時がありました。
「ノウハウが盗まれるのではないか」と
私たちの仕事はモノを売っているわけではありません。
形ある商品を売っているわけではなく、ノウハウを売っているのですから、指導風景も商品なのです。
いわゆる「パクられる」というやつです。形ある商品も世に出れば、研究され、まねされるのですが、モノをつくらなければいけないので、多少なりとコストがかかります。
しかし、指導はコストをかけずにコピーできるのです。
「お金をかけて学んだことを簡単にまねされるのは悔しい」とセコい考えをしていた時もありました。
今はこれです。⇒「まねる」尊敬してまね続ければ、オリジナルになるかも?
間違った解釈をされ、間違った指導をされる恐怖
いけないことですが、時には言い間違いをしたり、つじつまの合わない表現をしたりしていることがあります(間違ったことをしているわけではありません)こちら側の問題が一つあります。
これは迷惑をかけないために、自分の表現能力を上げるために努力をしなければいけません。一生修業です。
もう一つの問題は受け取る側の問題です。
私のしていることを誤解して理解して指導することです。
これも誤解をさせるような指導をした私にも非があるのですが、
いくら正確にやっても誤解を生じることもあります。
選手に間違ったことを教えてしまうと、選手にも迷惑がかかります。
少し変わったトレーニングをしているところを、同業者に指摘され、「大崎に習った」と言われても困ります。
弁解のしようもありませんし…
間違って伝わるのが怖いです。動画がなくてもその可能性がありますが、メモの内容が不十分だとやらないかもしれません。
「あの指導をまねしたいけど、メモだけでは思い出せない。もう一度教えて欲しい」と私に聞くことができれば、正確に覚えることができます。
動画は便利ですが、分かったつもりになってしまうのも考えモノです。
このように、撮られる側の心配事を書いてみました。
私が撮影をやめた理由
私も以前は撮影OKのセミナーでは、動画を撮っていました。
しかし動画を撮ることのデメリットに気がつき、セミナーの動画を撮ることをやめました。動画を撮ることがメインになってしまうからです。
2日間のセミナーは動画撮影OKでした。外国人講師でセミナー料金も高額だったため、何かを身につけたいという思いが強かったのです。
そしてみなさん動画を撮っているので、影響を受けたのもあります。
しかし、それ以来、動画撮影をやめました。
理由をまとめてみます。
映す場所取りに気が向いてしまう
動画を撮ると、映像が気になります。動画を撮りやすい場所の確保が一番になります。なるべく正面で、人の頭が入らない場所を無意識に探してしまいます。映すことが仕事になります。
メモをとれない
カラダの使い方などを紙にメモすることはとても難しいです。絵心があれば、イラストをパッパと描いてメモできるのでしょうが、人のカラダも満足に描けない私には動画は助かります。
しかし、片手にスマホを持ち、撮影していると、気がついたことや、思いついたことをすぐにメモできないデメリットがあります。
音声も入るので、思いついたことも話せば記録できますが、他の受講生もいる手前、一人でしゃべるわけにはいけません。
セミナーを受講するメリットの一つは、思いついたことや、考えたこと、気がついたことをメモすることだと分かった頃から、動画を撮らなくなりました。
映像に残るが記憶に残らない
映像に撮っているので、動画は残っていますが、「メモをとれない」同様、記憶に残りません。後で見直しても「こんなことやった?」と思うことが多いです。話を聞くことに集中するのではなく、撮ることに集中しているかもしれません。
同時にカラダを動かせない
講師の先生の動きを同時に自分でもやると記憶に残ります。フィードバックというのでしょうか、カラダが覚えてくれます。
スマホを持っていると、同時に動けなかったり、動きが小さくなったりする可能性があります。もったいないことです。
録画ボタンのオン・オフがめんどくさい
録画ボタンを押し忘れたり、消し忘れたりしてしまいます。
時には逆になってしまい、撮りたい時に停止ボタンを押すこともあります。みなさんも経験はないでしょうか。
そのほか、床がずっと映っていたり、ポケットの中が映っていたりします。
そもそも見直さない
よっぽどのことがない限り、数回見直すことがありません。
気になったものや、どうしても獲得したいものは見直しますが、
これらはおそらく動画がなくても覚えていたはずです。
動画があってラッキーと思ったことは何度もあります。
しかし大半は見ていません。
画面が動いていたり、ぶつ切りになっていたりする動画を見るのはストレスです。映し方が下手なのかもしれませんが。
以上、動画を撮らなくなった理由です。
動画は撮ることに気がいってしまい集中できません。
あとで見直せばいいという気持ちもどこかにあるのでしょう。
そして講師と一緒にカラダを動かすことができないのはもったいないですし。
「気がついたこと」「思いついたこと」などをメモすることは、動画に残す以上に、価値があるのではないでしょうか。
そう思うようになったので、私は動画を撮らなくなりました。
私の本音は指導風景の動画を撮らないで見て欲しいのです。
そのことを説明しても、「もったいぶっているのか」と思われるので
「撮影OKですよ」
と言うようにしています。
そして、私の動きをまねしてもらい、その様子をお互いに撮りあうことや、スマホを置いてみんなで同時にやったりします。
撮影している保護者にも声掛けをしてやってもらうこともあります。
これは私がささやかにやっている工夫です。
スマホのレンズからではなく、自分の目で直接みましょう。
【編集後記】
昨日は宮崎駅周辺で友人と食事をしました。
お互いに2位の健闘を祝して軽く飲んだのですが、
とても楽しい時間でした。お互い悔しがっていましたが。
私は1週間減量のため、ろくに食べていませんでしたから、
口に入るものはすべておいしかったです。
5食分抜いたので…
金沢は大雨だったようですが、こちらは猛暑日。
日傘が大いに役立ちました。
【昨日のOnce a day】一日一回新しいことを
・日傘男子デビュー
・銀メダル
・全日本マスターズ
・トリコ
・ラーメン一休