トレーニングの指導をしていて、わかりやすく伝えることの難しさを日々感じています。
環太平洋大学 トップガン(トレーニングルーム) 岡山
わかりやすい言葉で
人に伝えるだけでも難しいのに、わかりやすく伝えるのはさらに難しくなります。
しかし、わかりやすいと、伝わりやすくなるのも事実。
伝えるためには、わかりやすくしなければいけないと思っています。
そもそも、「分かりやす・い」とは三省堂国語辞書によると
・すぐわかる状態だ
・わかりいい
・わかりよい
こと。ネットなどで、もう少し調べてみると
・簡単である
・単純
・はっきりとした
・理解しやすい
・要領を得た
のようなことが書いてありました。
わかりやすいとは簡単で、複雑でないこと、なのです。
人に伝える方法としては、言葉で伝えることがあげられます。
言葉で伝えるのですから、わかりやすい言葉を探さなくては
いけないのでは、ないでしょうか。
その人の基準で
相手によって通じる言葉と通じない言葉があります。同業の人には
専門用語という共通語で話すと、すぐに伝わります。
初めてトレーニングする人は、専門用語で話されても当然わかりません。
「なんのこっちゃ」
となります。わかりやすい言葉に変えなければ、理解してもらえないでしょう。
「大腿四頭筋」と言うよりも「太もも」といったほうが
わかりやすいでしょうし、
「大殿筋」よりも「お尻」、
「ハムストリング」よりも「ももうら」
のほうが伝わりやすいでしょう。
反対に、同業の人に「太もも」と言えば
「……のどこ」と、もう一度、聞き直されるでしょう。
簡単な言葉が複雑な言葉になります。
その人をじっくり観察して、伝わりやすい言葉を選ばなくてはいけません。
短い言葉で
短い言葉のほうが伝わりやすいでしょう。
トレーニングは反復動作とはいうものの、数秒間の反復です。
長い言葉では、動作が終わってしまいます。
5秒前の動作のことを説明しても、いつのことかわからないでしょう。
・そこ
・もっと
・強く
・弱く
・ダメ
・いい
・長く
・短く
単純な言葉になります。
でもこの言葉が誰にでもいいわけではありません。
教える側と、教えられる側の言葉の定義が同じでなければいけません。
・「そこ」どこなのか
・「強く」どれが弱くて、どれが強いのか
・「ダメ」どれがよくて、どれがダメなのか
・「長く」どれが短くて、どれが長いのか
共通の基準があって、共通理解していなければ伝わらないでしょう。
擬音語・擬態語で
「ギューん」「くるっと」「さっと」など、擬音語、擬態語は
低学年の子たちには伝わりやすいでしょう。
もちろん大人もわかりやすいでしょう。
ジャンプトレーニングの着地動作は
「シャキーン」。
いつも使う定番です。
たとえて
たとえて伝える言葉も有効です。
身体を水平に倒し、片足を後ろに伸ばした片足バランスの時は「飛行機が飛んでいるように」
足を後ろにまっすぐ伸ばしてほしいときは「踵で壁をけるように」
まっすぐな姿勢をとるときは「天井から頭が引っ張られるように」
ベンチプレスの手首の角度は「グーでパンチするように」
など。
仲良くさせてもらっている、
ドームアスリートハウスの
友岡和彦さんが言った
「床にいるカブトムシをつぶさないように、足裏そっと、タッチする」
という、たとえ話は、私の中で最高傑作です。
(使ったことはありませんが)
言葉をたくさん知っていれば、たとえやすいかもしれません。
いろんなセミナーを受けること、多くの人と話すこと、
たくさんの本を読むことで
ぴったりとした言葉をたくさん見つけるでしょう。
見せて伝える
教える側に、デモンストレーション能力があれば「見せる」ことで
相手に伝わりやすくなるのではないでしょうか。
市民講座での出来事。
しゃきしゃきのおば様が
「あんちゃん、ごちゃごちゃ言わないで、一回みせて」
これがすべてです。
一回でスパッと決めて見せれば「おおーっ」となります。
後からの説明も説得力が増します。
見せて伝えるには5つのことをやっています。
かっこよく見せる
かっこよく見せると、相手にはいいイメージができます。
あんな風にやればいいのだと、自然にイメージができるので
マネもしやすくなるでしょう。
素早い、きれい、無駄のない動きも、かっこよく見えるでしょう。
一発目から決める
デモンストレーションの一回目から、バシッと決めることが、ポイントです。
2回失敗して、3回目に決めても、相手は、たまたま成功したと思うでしょう。
「本当にこの人、普段からやっているの」と、ちょっとでも思ってしまうと
素直に頭に入ってこないでしょう。
伝わるものも伝わらないのではないでしょうか。
ダメなマネもする
いい動きだけでもいけません。
「こうなったらダメだよ」
「ここがダメ」
と、ダメなマネも参考になります。
中には、「ダメなマネを見せると、それがイメージに残り、よくない」
と言う人もいますが、
よい動き(テクニック)と悪い動きの、違いが分かることに、
損はないでしょう。
私は見せるようにしています。
大げさに見せる
洗練された動きは、無駄な動きがなく、流れるように進んでいきます。
それがすごいことなのですが、
初めての人や、初級者はわかりません。
スムーズな動きなので、力の入れどころや、抜きどころがわかりません。
わざと大げさに、デモンストレーションします。
初心者や初級者には、大げさすぎるほどが、ちょうどいいです。
見せるほうもそうですが、教えられる側も、大げさにやってみましょう。
初心者は、どうしても動きが小さくなってしまいがちです。
これまた、大げさにやってちょうどいいことが多いです。
相手のモノマネをする
「あなたはこうなっていますよ」とマネして見せます。
今なら、すぐに録画して見せるのも方法ですが、
録音された自分の声が嫌なように、自分の姿もあまり見たくないもの。
かっこいい動きなら、見てもいいでしょうが、けっしてうまくない動きを、
冷静に見られない人が多いのではないでしょうか。
少し大げさにモノマネをして、教えてあげましょう。
その時
「こんなに、ひどく(かっこ悪く)はないですよ。大げさにやりましたから」とフォローしましょう。
あまりにも忠実にモノマネをすると、傷つけてしまうこともありますので
ご注意を。
見せることは効果的です。
見せるためには、自分も日々トレーニングをしなければいけません。
こればかりは、ごまかすことはできません。
触れて伝える
信頼関係ができたならば、触れて伝えることも効果的です。
リハビリや、マッサージ、ストレッチをするために触れる
とは違うので誤解のないように。
「補助する」と言えば誤解がないかもしれません。
トレーニングの時、悪い動きが出ないように、
・動きを導いてあげる
・動きを制限する
・動きを出してあげる
など、少し触れるだけで、正しい動きが伝わり、学習できます。
また、ベンチプレスやスクワットなど触れる(補助する)ことによって
安全に、自分の限界まで力を出せます。
筋力トレーニング中、どこの筋肉を鍛えているのか知らせるとき、
「ちょんちょんと」指でその部位を突いてやると
意識がそこに集中します。
筋肉に力を入れて欲しいタイミングを教える時も、その筋肉を
突けば正しいタイミングが分かり、力が発揮されます。
スクワットの時、膝が内側に入るクセがある人には、わざと
膝の外側を軽く押します。相手はこれ以上押されないように押し返し、
膝を内側に入れないようにするテクニックもあります。
それも膝の外側を触れます(押します)
触れて伝えることも効果的です。
同性、異性問わず、不快になる触れ方には
十分すぎるほど気をつけなければいけません。
配慮に配慮を重ねても間違いはありません。
時には触れないこともありです。
以上、わかりやすく伝える方法をまとめてみました。
分かりやすい言葉で伝えていると(話す・書く)周りの目が気になることもあります。
「あいつ専門用語知らないんじゃないか」
「なんて幼稚な言葉を使っているんだ」
「下手な動きだな」
「大げさなんだよ。デモンストレーション」
と思われているんじゃないかと。
そして教えている相手に対しても
専門家だと思ってもらうように
・専門用語を使ってみる
・細かいことばかり言ってみる
・動作のアラさがしてみる
など。「たくさん知っているんだよ」アピール。
そんな誘惑にかられないように、
自信と、絶対的な自分のトレーニング量を持って
伝えていけたらいいですね。
いや、いきましょう。
Once a day(1日1回新しいことを)
ある施設
Oさんの車に乗車
編集後記
昨日の夜から考えていたブログネタ。
ワークショップで講師の先生が言った言葉と似ていて
帰ってから、すぐに書き上げました。
いつものように、時間はかかりましたが。